この劇場で観たら、どんな作品でも傑作だと思える岡山の映画館シネマ・クレールで鑑賞しました。実際この作品は傑作でした。

ウィキペディアではサスペンスと表記されていましたが、僕はコメディだなと思いながら観ました。ノーベル文学賞受賞式を舞台にしたものすごく高レベルな夫婦漫才を観た気分です。

物語は

“昔あるところにおじいさんとおばあさんがいて、おじいさんは物書きでノーベル賞。おばあさんは良き妻として40年。2人の二人三脚はついに実を結びました”

から始まります。しかし。という風に話が転がります。

“おばあさんはストックホルムへの道中、40年溜めてきたいろんなものが爆発寸前なのでございまして。しかもおじいさんとおばあさんにはある秘密があったのです。”

と展開していきます。さて、その結末は。

僕の後ろの席で、劇中のグレン・クローズと同世代くらいの夫婦が観てたんですけど、どんな気分で観てんだろうと思いました。

要するにこの作品は、これまでの男社会の中で軽んじられてきた女性たちが、はっきりと主張をしていく物語なのです。と同時に、いかに女性が理知的で忍耐強いのか。男が言ってるロマンとかガマンとか俺の生き方とかがいかに陳腐でダサいのかがよく分かってしまう映画なのです。

僕はこの映画をコメディと言いましたが、正確に言うとコメディと思わないと観てられない映画でした。うわ。自分も嫁さんにこんな思いさせてるのかも。これ、このじいさんがやってるこのダッセェこと。これやってんじゃない?自分も。って思って背筋がゾッとなる映画なのです。

しかし、後ろの席の老夫婦はきっと奥様の方は共感しまくりだったでしょうが、旦那様は何とも思わなかったのではないかと思います。それは劇中のおじいさんが、おばあさんの気持ちに全く気づかないのと同じです。おばあさんのユニバースは多角的であるのに対して、おじいさんのユニバースにはおじいさん1人しかいないのです。だからこの2人の掛け合いがコントにしか見えなくなるのです。

僕もこれからは自分が陳腐でダサくて嫁さんに迷惑ばかりかけている前提で慎ましく生きていこうと思いますが、自信ありません。何はともあれ、素晴らしい作品でございました。